2015年8月10日月曜日

映画『ジャッジ・ドレッド』 ・・・スタローンじゃない方のスーパー執行官が犯罪組織を殲滅します

●原題:Dredd
●ジャンル:アクション/SF
●上映時間:95min
●製作年:2012年
●製作国:イギリス/アメリカ/インド/南アフリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ピート・トラビス
◆出演:カール・アーバン、オリビア・サルビィ、レナ・ヘディ、ウッド・ハリス、レイキー・アヨラ、その他大勢

 高気温が続いてます。暑すぎます。皆さんいかがお過ごしでしょうか?夏も真っ盛りですが、ここはいつもの通りです(笑)。
 今回は、暑気払いにスカッとするSFアクションです。玉ヒュンな場面もあるよ。

【ストーリー】
 核戦争によって荒廃化したアメリカ。放射能を免れた都市部では多くの市民が困窮した生活を強いられていた。また、自ずと犯罪率も高かった。法の執行権限を併せ持つ警察機構ジャッジは、そんな社会の秩序を維持する為、毎日汗を流してしていた。そんなある日、超高層アパートで転落事故が発生する。ジャッジのエース執行官ドレッドは、それがドラッグ犯罪に絡む殺人事件だと確信し、現場で大暴れする・・・。



【感想と雑談】
 原作はイギリスのコミックなんですね。アメリカ産かと思ってました。結構前にもスタローン主演の映画化作品があったのですが、殆ど心に残ることなくパンチのない印象で終わってました。しかし、今回の再映画化というのが・・・。

 俺が法だ。参ったかこの野郎。

 昨今、ハリウッドでアメコミ原作の映画化が熱いことや、前作(製作国アメリカ)の出来に不満を持たれたことで、かどうかは知らないのですが、今回のイギリス筆頭に南アフリカやインド、そして一応アメリカが製作に当たった本作は、成功してるんじゃないでしょうか。おそらく原作本来のイメージに近い出来なんじゃないかと勝手に思っています。

 前作は、どう見てもスタローンな執行官ドレッドがジャッジ内部の陰謀に巻き込まれるモッサリした内容(と記憶してます)でしたが、今回は終始、ドレッド一行と犯罪組織による怒涛の暴力の様が大変ストレートでよろしかったです。たぶん忙しすぎて剃る暇もないであろう無精髭と、常にへの字のクチ元がイカす我らがジャッジ・ドレッド。

 意外にしっかりした画作りで、ロケ撮影の都市部にありえない巨大な建造物が登場する構図は、その太陽光の差し込みや大気の霞みからして、現実のものにしか見えず感心するばかりです。昨今、この手のデジタルマット合成はとっくの技術でコスパ最高なので、制作費は結構安く済んでるのでしょうね。ちなみに制作費は、前作:9000万ドル、本作:4500万ドル だそうです。

 冒頭、専用バイクで犯罪グループのバンを追跡するドレッド。この専用バイクがなんというか、頭デッカチのずんぐりボディなのがダサくて残念です。もうちょっとスマートなデザインにならんかと思いました。



 しかし、そんなの些細なことで、ドレッドがタイヤを撃ちぬいてバンを転がせば、逃走した犯人は人質を取りますが、そんなのお構いなしにドレッドは即決で焼夷弾を犯人の顔にブチ込み処刑するという、ここまでの流れにまずシビレます。

 この冒頭や、後に描かれるドラッグ精製室への襲撃は、なんだか『ロボコップ2』('90)の麻薬工場のガサ入れの場面を思い出します。これ絶対にリスペクトしてんだろと思いました。

 何よりもガサツで殺伐とした雰囲気がいいですね。引きの画ではかなりの未来像ですが、活動する人物の目線に映るのはどれも生活臭が漂っていて、SF的なアイテムはさほど出てきません。せいぜい、ドレッドが使用するハイブリッドなハンドガンくらいです。

 大都市を駆けまわるのかと思ったら、ほどなくしてピーチツリーという超高層アパートがメイン会場になります。意外に閉鎖的な展開でありました。巨大すぎるアパートは中抜きの空洞を囲むように口の字に居住区が組まれた200階建て。1階フロアがショッピングモールになっていて、それを囲む居住区が上層まで続いてる様は、ロケなのかCGなのかわからないほどの臨場感です。

 謎のドラッグ「スローモー」を密売する殺人鬼ママ率いる組織が、ドレッド一行をアパートに閉じ込めると、館内放送を通じて住人らにドレッドを殺害せよ、と扇動します。あれ、これってインドネシア映画の『ザ・レイド』('11)でもやってなかった?でもまあ、先のアイデアがどっちだろうと関係ないです。こういうシチュエーションは燃えますもんね。

 本作で、何かと絶句するほどのキーアイテム「スローモー」。これをキメた時の表現が前衛アートすぎる映像になっていて非常にインパクトがありました。吸引器から吸った瞬間、周りが異様な発色をしながら超スローな動きになるところは作家性まで感じる出来栄えです。独特すぎます。とにかく見入ってしまいます。



 バイオレンスで殺伐とした中にも独特な美学があって、特に先の「スローモー」をキメてる視点で、体が舞ったり、銃弾が皮膚を砕くところを超スローで描くところは、気持ち悪いんだけども美しすぎるという。なにそれ。

 犯罪組織がスラム街のような高層アパートを根城にローテク武装(コンピュータは扱うけど)していて、やたら人間的で血生臭いドラマを形成している辺り、アメリカ以外の製作国が抱える歴史上のDNAが反映されてるような気がします。ママが無表情&無言で下っ端の仕事にプレッシャーをかける場面は、押し潰されそうな空気にゾッとしました。

 ここで、ママを演じる女優レナ・ヘディがとても妖艶な美人さんで、こういう人が顔に深いキズを入れて、極悪非道な役をやるってのは、とても正しい選択だと思いました。悪のヒロインが映える作品には傑作が多いのではないでしょうか。映えすぎてる『エクスペンダブル・レディズ』('14)は傑作を通り越して爆笑ものでしたが。

 新入り執行官カサンドラと力を合わせながら、ドレッドは敵を粉々にしていき、遂には最上階にある組織の本部へと突入。そこでは非道な仕掛けを施した、極悪ヅラのママが待ち構えていました。ここからの展開を見て、『殺し屋イチ』('01)へのリスペクトも入ってるんじゃないかと思ってしまいました。

 どんな相手だろうと法を破る者には容赦無いドレッドの執行ぶりに、いつもの心のガッツポーズを送ります。犯罪者への人権をもとにした配慮や時間をかけすぎの裁判には、わかっているけどイラッとくる現実において、本作の活躍ぶりは一服の清涼剤ではないでしょうか。

 そういえば、最初から最後まで、ジャッジ・ドレッドはヘルメットを装着しっ放し。口もと以外、顔を見せることは一切ありませんでした。


 俳優カール・アーバンの立場は。


(C)Rena Films (PTY) Ltd.and Peach Tree Films Ltd.
【出典】『ジャッジ・ドレッド』/カルチュア・パブリッシャーズ

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