2011年6月1日水曜日

映画『ポストマン』 ・・・ケビン・コスナーのオレ様カッコいい郵便配達人

●原題:The Postman
●ジャンル:SF/アクション/アドベンチャー/ドラマ
●上映時間:177min
●製作年:1997年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ケビン・コスナー
◆出演:ケビン・コスナー、ウィル・パットン、ローレンツ・テイト、
オリビア・ウィリアムズ、ダニエル・フォン・バーゲン、ジェームズ
・ルッソ、トム・ペティ、ショーン・ハトシー、その他大勢
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 台風は無事去ったようですが、これから梅雨なんですよね。いやな季節です。早くお寒いクリスマスにならないかな。 

【ストーリー】
 2013年。戦争によって荒廃したアメリカ。復興し始めた各地を旅する一人の男がいた。ある日のこと、ベスレヘム将軍率いる武装軍団ホルニストに捕らえられ強制的に兵士にさせられた男は、ベスレヘム将軍の独裁的行為に我慢ならなくなり隙を突いて逃走する。そして途中、ポストマン(郵便配達)の装備と郵便物を入手する。男はポストマンに扮し、ある集落に手紙を届けることで歓迎を受けるが、その際に豪語したアメリカ再生のホラ話を住民らは信じきってしまう。やがて、各地を結ぶ手紙に希望を託したい住民らは男を英雄扱いし、郵便事業を発展させようと大勢の住民がポストマンになると名乗り出る。男は複雑な心境になるも、皆の期待に応えるべく力となり、周りは希望と平和で溢れていくかに見えた。しかし、かの軍団ホルニストがそれを簡単に許すはずがなかった・・・。

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【感想と雑談】
 本作は公開当時から何かと話題で持ちきりだったのを覚えています。コスナーが何かやらかしてるらしいと。その頃にはコスナーに興味はなくなっていたので、結局一度も観ずに現在に至る訳ですが、先日、読者りーりん様からリクエストを頂いたことで、なんだか興味が沸いてきました。今さら初めて観る自分にとって、本作がどう映るのか。公開当時とりーりん様の評価ダブルパンチで、だいたい想像付いてますが(笑)。
 
 一応SFなんですね。時代は2013年。今からたったの2年後というホットな近未来。それまでに大規模戦争が起きてますので、ほぼ文明基盤が滅びた原始的な未来像になっています。コスナーは原作の魅力をブチ壊すような作りにしているらしいのですが、原作を知らないのでその辺のギャップはよくわかりません。でも、コスナーといえばのオレ様カッコいいだろ?という志はビシビシ伝わってきました。さすがです。
 
 コスナー演じる男が、早々に軍団ホルニストのベスレヘム将軍に見つかり、軍団入りさせられます。この時、男はカッコいい立ち回りを見せることもなくヘタレ状態ですが、これから徐々に立ち上がっていくんだぜ、という魂胆が垣間見えるような見えないような。とにかく軍団ホルニストの本拠地で男の特訓が始まります。本拠地では他からも徴兵されてきた大勢の男らがいますが、その中にどう見てもキーとなる二人の人物が男に接近してきます。そうかコイツらが相棒となって共に反撃していくのか・・・と思っていたら、二人はあっけなく昇天し、結局は男だけ軍団から逃走。前半も前半で軽く期待を裏切られます。易々とオレ様に相棒を付けるんじゃねえってことですね。

 ポストマンに扮した男は、郵便事業を復活させたことで集落の人気者となり、途中で知り合った未亡人ともよろしくやっていきます。その一方で、軍団ホルニストの悪事が並行して描かれるのですが、何かとベスレヘム将軍が現場まで出向いてきます。本拠地でふんぞり返ってればいいのに。このベスレヘム将軍、一見優しそうな面構えなのですが、戦争前はコピー機のセールスマンをやっていたらしく、今がまさにオレ様の天職!とか抜かし、極悪非道に走ります。眠っていた才能が戦争によって悪い方向に開花したのでしょうか。時間があれば自画像を描いたりしてインテリっぽいです。いつも2~30人の兵隊と一緒に行動してますが、規模のデカさがイマイチよくわかりません。

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 軍団ホルニストにムカついたポストマンは、集落の元軍人の老人から戦略の知恵を借りることにします。これはカタルシス間違いなしの展開になると期待できたのですが、ホルニストの斥候部隊数人を仕留め、その後に死体を隠すだけで終わりにします。全滅させるんじゃないのかよ。ホルニストはこれくらいにしておこうというヘタレなポストマンですが、これが我慢できない集落の仲間が死体をベスレヘム将軍の目の前に投げ捨ててしまいます。それを知ったポストマンは「何すんだ!!」と怒り心頭ですが、こうしないと話は進みません。

 色々考えた挙句、ポストマンは一人で軍団ホルニストに立ち向かい、ベスレヘム将軍との一騎打ちに挑みます。仕方なく受け入れるベスレヘム将軍ですが、ちっとも面白くありません。決起した集落の住民らが一大決戦で悪の軍団を滅ぼすというのが、もっとも望ましい展開だと思うのですが、これがクチ喧嘩の後にスローモーな殴り合いだけとか。しかもせっかくノックダウンさせたベスレヘム将軍にトドメを刺すこともなく、画的にはつまらないクライマックスを迎えてしまいます。みんな仲良く平和にいこうぜ、というポストマンの演説に、下がりかけた溜飲も全てリバースです。
 
 全体の顛末としては、コスプレヘタレ男の嘘八百が集落の住人を奮い立たせ、それが各地に伝染し、軍団ホルニストとの対決から、最終的に男=ポストマン=英雄伝説が生まれることになります。コスナーにとっては、この英雄伝説辺りが最も外せないオレ様ポイントであり、最後の最後に映し出されるオブジェには全力を注いだに違いないと思うのです。2043年にお披露目されるこの恥ずかしいオブジェに。
 
 中盤、こんなシーンがありました。一人の少年が手紙を出そうと家から飛び出すのですが、その目前で馬に乗ったポストマンが勢いよく通過していきます。ションボリな少年が引き返そうとすると、急停止しクルリと振り向くポストマン。そして少年を凝視し溜めること40秒間。仰々しいBGMと共にボルテージがMAXに達した辺りで遂にダッシュ。もの凄い勢いで走りながら少年の手紙を鷲掴みにし、どっかに去っていくポストマン。これが前述のオブジェへの布石になってる訳ですが、そんなことよりも流鏑馬じゃないんだから、手紙はちゃんと立ち止まって受け取るべきですね。一体どんな郵便サービスよ。


(問題の流鏑馬。少年役はコスナーの実の息子だとか。上のポスターでイエローカード出してるちっこいヤツ)
 
 あまり抑揚もない割に上映時間が3時間もあるので、先の流鏑馬シーンとか色々バッサリ切り落として90分くらいにまとめたら、評価は上がったかもしれませんね。いや、やっぱりダメか。演出や役者陣、それに音楽なんかは悪くないと思うのですが、ヒーロー気取りのオレ様カッコいいコスナーは残念であります。
 同じくコスナー主演の退廃SF大作『ウォーターワールド』('95)の方が、爆笑できた分お徳なんだと思います。

 最後に色々と受賞された功績を称えて終わりにしたいと思います。
 
 <1997年度ゴールデンラズベリー賞>
 ・最低作品賞
 ・最低監督賞(ケビン・コスナー)
 ・最低主演男優賞(ケビン・コスナー)
 ・最低脚本賞(エリック・ロス、ブライアン・ヘルゲランド)
 ・最低音楽(歌)賞(ポストマンの挿入歌全部)

 やるじゃん。


(C)1997 Warner Bros. All Rights Reserved.
【出典】『ポストマン』/ワーナー・ホーム・ビデオ

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