2009年12月31日木曜日

映画『マイノリティ・リポート』 ・・・未来の警官隊が非常にヤバイものを装備してます

●原題:Minority Report
●ジャンル:SF/犯罪/アクション/ドラマ/ミステリー
●上映時間:145min
●製作年:2002年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:スティーブン・スピルバーグ
◆出演:トム・クルーズ、マックス・フォン・シドー、
コリン・ファレル、サマンサ・モートン、その他大勢
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 どうも!今回は微妙に懐かしいスピルバーグのSF作品です。あまり触れられることのない点をネタとして強調してみました。今年の偏り道最後の記事として締めくくりたいと思います。大晦日にコレかよ!とかいうツッコミは大歓迎です(笑)。

【ストーリー】
 2054年のアメリカ。多発していた殺人事件は犯罪予防局の予知能力システムよって見事に減少。予知能力システムはプリコグと呼ばれる3人の予知能力者によって構成され、局員のジョンは予知された情報を元に現場へ急行する日々を送っていた。そんなある日のことシステムはジョン自身が殺人を犯すことを予知してしまう。そんなはずはないとジョンは動転しながらも真相解明の為に逃走。一方、法を犯す前に逮捕することが気に入らない司法省は、そんなジョンを手がかりに犯罪予防局を潰そうと躍起になる・・・。


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【感想と雑談】
 これ、最近なんかの動画(特撮ベスト100・・・だったかな)で犯罪予防局の空飛ぶパトカー発進の映像が紹介された際、ここ確かにカッコよかったよなと思ったのと、初見の時からすんごく気になってた部分もありましたんで、今更ながら記事にしてみました。

 初めて観た時はよくわからない話でした。大筋は陰謀に巻き込まれたトム・クルーズ演じる局員ジョンが、いかにして悪を暴き事件を解決していくかという内容なんですが、プリコグと呼ばれる予知能力者の特性を利用したトリックや、どの時点で何が起きているのかがあまり理解できなくて、ラスト付近は真相解明しましたという流れを傍観しているようなものでした。

 今回DVDで何度か見直してみて、だいたいわかるようになったのですが、証言や回想、未来ならではのアイテムが入り乱れてのインパクト状態に未だ釈然としない部分があります。これは更に見直していけば精度は上がっていきそうですが、矛盾点は多々残りそうです。この手の作品は矛盾などは容認しないと成り立ちませんが問題はその程度ですね。

 デビッド・リンチ作品は矛盾そのものをパズルのように楽しむことができますが、本作は現実に起きていることをストレートに表現しているはずなので、いかに矛盾を感じさせないかが重要なんだと思います。・・・って、頭の回転が鈍い私がこんな偉そうなこと言うのもあれなんですが(笑;)。

 見た目でいきますと、未来が舞台ということで、目を見張るアイテムはてんこ盛りです。2054年という割と間近な時代設定からか、景観については現代のデザインを大部分残しているのですが、前半だけにCGで描かれた超未来都市が出てきます。最初にジョンがカプセルみたいな自動操縦の車で逃走するところですね。当局に操縦を奪われたので車から脱出しようとすると、突然に道路が垂直に折れ曲がって振り落とされそうになりすが、この辺りのビジュアルインパクトは相当なものです。

 この後、下降を続ける車からビルのベランダに飛び込むと、そこでは妙な団体がヨガ(?)のポーズでお出迎え。スピルバーグ流一発ギャグですね。とりあえず笑っておきましょう。後半に入ると都市部から遠のくせいか、車は普通のタイヤ式になって景観は現代的に落ちついてしまいます。ちょっとアンバランスな感じ。


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 ジョンがプリコグの予知した情報を分析する時に使うスクリーンは冒頭での目玉となっていて印象深いです。しかし手の動きだけで操作するのは斬新ですが、使いこなすのは大変そうです。腕が疲れそうだし。

 また、ジョンの自宅にはコーンフレークがあるのですが、その箱自体がスクリーンになっていて、やたらアニメのキャラが騒いでいます。こんなのが実現化したら鬱陶しいと思うのですが、案の定ジョンは思い切り投げ捨ててしまいます(笑)。いいぞ。

 こういう一方的なインターフェースは他にも導入されていて、ビルやトンネルの壁面、そしてなんと新聞までも見出しや宣伝がウジャウジャ動いています。新聞は読みづらそうです。話逸れますが、この新聞が登場する地下鉄のシーンで、背後に頭だけ写ってるのキャメロン・ディアスなんだそうです。よく見てみると確かに目元が彼女っぽいです。カメオ出演だとか。

 アイテムの中で直感的に実現性を感じるのが、個人を特定するデバイス群ですね。指紋と同じく個人を特定できる網膜情報を登録しておいて、いたるところでセンサが働きます。バイオメトリクスによる住民カードですね。特定の場所で個人認証をするには大変便利ですが、この未来ではマーケットにも随分と適用されていて、街中を歩いていると色んな広告に仕込まれたセンサが反応。

 「やあジョン、寂しくないかい?」
 「やあジョン、ストレスが溜まっているようだね」
 「やあジョン、旅行なんてどうだい?」

 やたら広告が個人攻撃を仕掛けてきます。鬱陶しい事この上なし。電車に乗るとき手ぶらで清算が出来るのは便利な気はしますが。しかしここまで管理された社会って居心地悪いですよね。


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 未来ということで警官隊も黙ってはいません。先に発進シーンがカッコいいと書いた長距離移動用の空飛ぶパトカー(なんて名前だろう?)ですが、よく見るとカタツムリみたいなデザインでちょっと不恰好。『ブレードランナー』のスピナーの方が100万倍カッコいいです。

 警官隊らはちょっとした移動ではジェットパックを背負ってこれまた空中移動します。ジョンを発見し逮捕しようと躍起になって空から舞い降ります。その動作からしてワイヤで吊ってるのは見え見えですが、デジタル処理でワイヤを消しているので、リアルなんだけども変なシーンになってます。また、人間を自由に飛ばすには、かなりの推進力が必要のはずですが、ジェットパックからはちょびっとしかジェットが出ていません。

 ジョンと乱闘する際に大勢でジェット噴射させているのですが、周りは真っ黒こげにもならず皆平気です。更にジョンと取っ組み合いながらアパートの窓から飛び込むと、食事中の家族の頭上でホバーリングするのですが、焼けるのはハンバーグだけです。普通なら全員がハンバーグになるはずです。まあ、ネタにできる矛盾点ということでヨシとしましょう(笑)。

 警官隊の装備品がまたいくつかあるのですが、スパイダーという網膜センサを備えた小型ロボットは本作の特撮場面で一番費用がかかっていそうです。手のひらサイズで関節のない3本足をウネウネ動かし移動するその姿は奇怪な虫そのもの。捜査の為アパートに放たれたスパイダー群をカメラが天井越しの視点で追っていくところは、各部屋で住民らが色んな反応を示していて面白いです。喧嘩真っ最中の夫婦がスパイダーが近づいたときだけピタッと喧嘩を止めるのは笑いどころで、こういうギャグは至るところで拝めることになります。

 また、司法省の役人が装備する銃が面白いです。銃床を掴みながら銃身をクルリと一回転させることで発射が可能となり、また発射されるのが実弾ではなく一種の衝撃波になっています。ジョンがこれを器用に扱いながらアクロバティックに役人らを吹き飛ばす様は見ていて気持ちがいいのですが、あるシーンのみの短い出番となっているのは非常に残念なところです。


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 さて、初見の時からすんごく気になってた部分というのが、警官隊のある装備品に対する字幕翻訳なんです。それは警官隊が路地裏でジョンを取り囲んだ時に放つ一言

 「嘔吐棒の準備はいいか?」

 ・・・嘔吐棒?!なんだ嘔吐棒って??その後、暴れ出したジョンにその警棒らしきものを逆に押し付けられ激しくリバースする警官隊。そして大惨事。なるほど確かに嘔吐棒。でも他にもっといい翻訳なかったのかなあ。吹替では「嘔吐誘発スティック」とか言ってるし。

 調べてみると英語では「SICK-STICKS」と付けられています。気分を悪くさせて抵抗力を無くす警棒のようですが、その効果からまんま翻訳するのもどうなんでしょう。せめて生体鎮圧棒か生体鎮圧スティックとか・・・でもなんかゴチャゴチャしちゃうなあ。嘔吐棒ならスッキリするのか(どこが)。ちなみに翻訳担当は我らが戸田奈津子先生・・・。「AUTO-BOW」とかいう自動式ボウガンだったらよかったのにね!(←意味不明)。皆さんだったらどんな訳にしますか?

 最後に役者について。予知能力者プリコグの紅一点アガサの母親役をジェシカ・ハーパーが演じてます。有名どころで『サスペリア』の主人公役がありましたが、私にとっては『ファントム・オブ・パラダイス』('74年)のフェニックス役が思い出の女優さんなんです。今回は台詞は全然ないし出番も非常に少ないのですが、事件のキーにもなっているので心に残る存在となってました。さすがに昔の面影は遠のいてましたが、またお目にかかれて嬉しかったです^^。

 すっかりアクの強い展開や映像が前面に出てしまった本作ですが、子供っぽい残酷性やイタズラ心が垣間見えるのは昔と変わりないスピルバーグ節だなと思います。なんだかんだ嫌いじゃないですこの作品。ご覧になってる皆さんの印象はいかがでしょうか?


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 さて、ついに2009年も終わりですね。今年も当ブログは更新頻度が激減しながらもなんとか続けることができました。こんなブログにお付き合い頂いた皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。来年もまた色々ありそうですが、なんとか楽しい年にしたいものですね。

 今年も色々とお世話になりました。それでは皆様、よい新年をお迎え下さい♪

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2009年12月13日日曜日

あのヒューマン・リーグがスーパージョッキーに出演してたですか

おお、こんなに短期間での更新は久しぶり。でも映画ネタじゃないんです(笑;)。

YouTubeで懐かしやヒューマン・リーグを検索してみたら、あるインタビュー動画を発見したのです。これ観て一瞬思いました。”何これヒューマン・リーグってスーパージョッキーに出演してたの?!”(笑)。非常に新鮮だったのでアップしてみます。

英国にもこういうバラエティ番組があったんですね。途中PVを紹介したと思ったら1秒くらいで切ったり(動画上カットしてるか)、ラストに盛大なイタズラをしたりと、ノリノリな司会や暴走気味な進行がどことなく日本的です。英語なんで何言ってるのかサッパリなんですが(笑)。個人的にはファンだった女性メンバのジョアンヌ(黒髪の)をもっとアップで映して欲しかったな~。

ヒューマン・リーグに一切ノータッチだった方はスルーして下さい(笑;)。

『The Human League - Interview (2nd Bit) Oct 1981 ITV 1 Tiswas』

あのヒューマン・リーグがこんないじられ方するとは。。。サイコーです♪

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2009年12月7日月曜日

映画『2010年』 ・・・来年は太陽系に大異変が起きる模様です

●原題:2010: The Year We Make Contact
●ジャンル:SF/ドラマ/スリラー
●上映時間:116min
●製作年:1984年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ピーター・ハイアムズ
◆出演:ロイ・シャイダー、ジョン・リスゴー、ヘレン・ミレン、ボブ・バラバン、キア・デュリア、ダグラス・レイン(HAL9000音声)、その他大勢
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 どうもです♪これまた久々の更新でございます(笑;)
巷では最新作『2012』で盛り上がっているようですが、今回はその2年前つまり来年にも超一大事が起きるんですよ、ということをアピールした作品になります。凄まじい地盤沈下の前に、太陽系の一大事で人類みな兄弟です。たぶん。

【ストーリー】
 2001年のディスカバリー号による木星探査計画が失敗に終わり、総責任者のフロイド博士は地上でションボリと余生を送っていた。出来れば真相を確かめに再び木星に行きたいところだが、現在アメリカは冷戦に忙しく宇宙開発の予算が下りない状況にあった。そんなある日、ソ連の科学者が目の前に現れ、我が国のレオノフ号を木星に向かわせるため音信不通となっているディスカバリー号の詳細を教えて欲しいという。これはチャンス到来とばかりに自分が同乗しディスカバリー号をメンテすることを提案するフロイド博士。ソ連とアメリカの両政府は難色を示したが、最終的には了承。4ヵ月後、アメリカ側からフロイド博士と2人のエンジニアが同乗するソ連のレオノフ号が木星に向け発進する。その先でえらいことが待ち受けていることも知らずに・・・。


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【感想と雑談】
 公開当時もそうでしたが、今回久々の再見でも『2001年宇宙の旅』の続編としては、とても残念な出来になっていると思いました。とことん科学考証に拘り、無機質に淡々と攻めまくるところが神々しくもあった『2001年~』ですが、本作は何か余分な点や垢抜けていない点が多々あります。

 要するにダサいです。これが続編でも何でもない宇宙SFの単品ということであれば印象も変ったかもしれませんが、ビッグタイトルの続編を背負っている以上、どうしてもハードルが高くなってしまいます。原作は同じくアーサー・C・クラークによるものですが、制作&脚本&撮影&監督がピーター・ハイアムズ印という、ごっつ俺様流を貫いた作品になっています。キューブリック監督にも一貫したポリシーに凄く俺様流を感じたのですが、ハイアムズ監督は残念ながら個性というか特徴的なところが感じられないので不安になります。

 冒頭、ニューメキシコ州に現存する電波望遠鏡(『コンタクト』でジョディ・フォスターが怪電波をキャッチする場面でも登場)を使ったロケを行っています。ここでフロイド博士とソ連の科学者が接見するのですが、周りは砂漠に等しい荒涼とした大地になっていて、早くも宇宙SFから程遠い画作りになってます。「2010年になっても、そんなに風景は変らねーだろ」というハイアムズ監督の有難いお言葉が聞こえてきそうです。(これはこれで先見性があったと見るべき?)

 その後フロイド博士は、のどかなホワイトハウス前でソ連との共同計画について大統領を説得させる為の秘策を練ったり、家に帰れば家族に長旅に出ることを打ち明けたりします。この時、フロイド博士の奥さんは、流しで皿を割ってしまう程のショックを受けます。ここがなんだか取って付けたような印象で、ディスカバリー号の事故のことを知ってのことなのか、何でそこまでショックを受けるのかイマイチ説明不足に感じました。また、フロイド博士の大豪邸ではイルカを飼っているのですが、宇宙SFものに子供共々プールではしゃぐイルカは不要なんじゃないかと。原作に入ってたらゴメンですけど。

 冒頭からたるい地上ドラマが続きますが、1点だけ目を見張るところがありました。フロイド博士が海辺でノートパソコンを扱っているところです。これプロップではなく、Apple社が宣伝も兼ねて出した新作パソコンの現物なんだそうです。80年代初頭からあのようなコンパクトな筐体が開発されていたのですね。ちょっと感動しました(というか勉強不足><)。この数年後に制作される『エイリアン2』に登場するセントリーガンのコンソールについてノートパソコンの先駆けだと豪語したのが恥ずかしいです(笑;)。しかし、外人さんはなんで海辺でパソコン扱うのが好きなんでしょうね。他の作品でも見かけますよ。止めた方がいいと思います。砂とか潮風浴びると押したキーが元に戻らなくなりそうです。


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 やっとこさ舞台が宇宙に移ると、ソ連が誇るレオノフ号がいきなり登場しますが、地球の宇宙施設から発進するようなワクワク感溢れる様を描くこともなく、一気に舞台は木星近辺に飛んでます。このレオノフ号、どことなく『エイリアン2』の戦艦スラコ号を思わせるのですが、両作のデザイナーがシド・ミードなので納得です。私はシド・ミードの大ファンですが、彼のデザインは本作ではちょっと派手に見えて残念です。

 船内のコントロール室にはド派手な計器類に透明な柱が乱立してたりして全体的にカラフルで軽い印象。コンソール部分をよく見ると、普通のデスクトップ用のキーボードがパネルに埋め込まれてたりします。宇宙を航行している空気があまり感じられません。重力についてはレオノフ号の居住区は回転しているので、その遠心力によってクルーは普通に歩き回っています。なのに、あるシーンではフロイド博士が打ち合わせ中にペンを宙に浮かしたりします。回転止めちゃったのかな。やる気も一緒に。

 再登場するディスカバリー号ですが、ミニチュアや船内のセットを製作するのに『2001年~』の関係書類が全て処分済みだった為、作品鑑賞しながら苦労して図面を起こしたんだそうです。全体的なデザインは頑張って再現しているようでした。しかし、1点だけ似ても似つかない部分がありました。それはモニタ画面です。これが一番残念なところ。なんとただの丸っこいブラウン管を使っているのです。

 『2001年~』では、今で言う液晶パネルを彷彿させる角ばったモニタ群が作品を際立てていました。刻一刻変化する情報を映し出す直角平行でフラットなモニタがごっつカッコよかったと思いませんか?これ、当時の現存する製品では容易に実現できなかったので、パネル(スリガラス?)の背面からCGではなく手書きのアニメを映写機で投影してたそうなんです。手書きですよ!どんな手を使ってでも確実な未来を正確に表現しようとする熱意が凄く伝わってきました。

 残念ながら本作では熱意どころか冷気を充満させるくらいに妥協しちゃったようです。製作当時はCGも発達してたでしょうし、既存のブラウン管を使うことで製作もし易かったのかもしれません。しかし未来のインタフェースを表現する努力が欠落しているので、非常に時代性を感じる出来になってしまってます。ディスカバリー号だけでなくレオノフ号もです。まんま80年代の空気。劣化したデザイン。予算の問題があったのなら、シド・ミードを起用せずモニタの表現に力を入れれば良かったと思うのです。こういうちょっとしたところの考え方でも作品の出来は左右されますよね。

 事故ったディスカバリー号の船内では、本船の船長デビッド・ボーマンが幽霊のごとく登場し、フロイド博士一行に「これから木星に素晴らしい事が起こるのでさっさと地球に帰れ」とお告げします。これまでに衛星イオで不可解な現象が発生したり、巨大なモノリスが登場していることからも、フロイド博士はヤバイ空気を察するのですが、それでもレオノフ号のロシア人クルーらは頭が固いので納得しません。

 しかし、木星表面に大量のモノリスが出現しだすと、さすがにこれはヤバイと一気に帰還モードに移ります。木星の引力圏から脱出するのにレオノフ号の推進力では足らない為、浮遊するディスカバリー号と合体してダブルの推進力を得ようとしますが、そうするにはディスカバリー号のコンピュータHAL9000を説得する必要があります。途中で切り離したディスカバリー号が木星の異変に巻き込まれるのは間違いなく、そんな運命を人間同様の知能を持つHAL9000はどう受け止めるのか。ここが最大の見せ場となってます。大したことないかもしれませんが。


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 デビッド・ボーマン船長を『2001年~』と同じくキア・デュリアが演じ、HAL9000の音声も同じくダグラス・レインが担当しています。ここはよくぞやってくれたとちょっと嬉しかったですね。前作から16年も経ってるので、キア・デュリアには特殊メイクを施しているようですが、そんなに違和感はなかったと思います。

 一方、フロイド博士をロイ・シャイダー、ディスカバリー号の設計士をジョン・リスゴーが演じています。シャイダーにリスゴーです。二人とも名優だと思うのですが、本作をダサくしている要因でもあります。この二人が出てくると、どうも現代的に感じてしまうんですね。二人とも未来の宇宙にマッチしてないです。無名の役者を使ってたらどうなってたかな。

 ロシア人側ではレオノフ号の女性キャプテンをヘレン・ミレンが演じてます。ロシア訛りの英語がイカしてるのですが、なんといっても若い。言われないとヘレン・ミレンだと気づきませんよ(笑)。その他ロシア人側にはもう一人女性クルーがいるのですが、台詞がほとんどなく、途中フロイド博士とちょっと絡むだけで、以降一切出番はありませんでした。あんな狭い舞台でどんだけキャラを無駄にしてんだ。

 『2001年~』の神秘的で難解な展開からすると、本作は意外なくらいわかり易くまたスケールの小さいオチを迎えます。地球ではアメリカと当時ソ連との冷戦が未来まで続いている設定になっていて、開戦間近という非常に緊迫した状況にあるのですが、木星の大異変を知った両国の首脳陣はあることを悟るという、なんだか説教じみたオチでもあります。神秘性もなくベタベタになってしまったという印象ですね。それにしても、木星にあんなことが起きたら、太陽系おかしくならないのかな??

 『2001年宇宙の旅』がSF映画の金字塔と呼ばれるのは、何年経っても劣化しない未来が焼きこまれているところにあると思うんです。直角平行に真円という質素なデザイン美学には常に先を見る科学の目を感じるし、説明を排除してBGMはクラシック音楽のみというところも一役買ってるでしょう。2001年はとうに過ぎましたが、この素晴らしさは劣化どころか年を増すごとに加速していく一方です。

 本作は科学の目ではなくエンタテイメントの目に特化してしまったようです。しかも中途半端に。木星を当時の情報から最新のCGで精巧に表現したとしても、身近のコンソールに既存のブラウン管やキーボードをはめ込むだけの安易なディテールでは、今見るととっても劣化した未来になってしまいます。逆行した2010年です。レオノフ号についてはソ連の技術後進を示唆していたと解釈してもいいかもしれませんが、肝心のディスカバリー号の件でポカミスしているので、結局は残念な結果でございました。今話題の2年しか違わない『2012』よりは明るい未来なんですけどね(笑;)。原作はシリーズ化してこの先も話は続くのですが、映画化は1作目だけでよかったと思います。

 ピーター・ハイアムズ監督はこの何年か前に『アウトランド』という宇宙SFものも撮っているのですが、こっちの方がずっと楽しめると思います。木星の衛星イオを舞台にショーン・コネリーが宇宙の麻薬組織に戦いを挑むもので、シンプルでアクション有りの楽しさがあります。宇宙でショットガンをブッ放すし(笑)。あ、まさかこれに味占めて『2010年』を撮ろうとしたんじゃないだろな。


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・・・・・・
 さて、そろそろクリスマス時期ですな。正直この歳になってもワクワクなんですが、一方でなにがクリスマスじゃい!という自分もいたりします(笑;)。ということで、素敵なMAD動画を紹介して終わりにしたいと思います。もう古い動画なんですが、某動画サイトでは有名な字幕MADで、ドイツ名作『ヒトラー/最期の12日間』での緊迫した作戦司令室のやりとりを、涙と笑いの渦に変えまくってます。空耳が凄い。(なに今回の記事)

『ヒトラー総統閣下がクリスマスについてお怒りのようです』
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