2009年2月21日土曜日

映画『ローラーボール』 ・・・近未来のスポーツがこれまた大変なことになってます

●原題:Rollerball
●ジャンル:アクション/SF/スポーツ
●上映時間:125min
●製作年:1975年
●製作国:イギリス
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ノーマン・ジュイソン
◆出演:ジェームズ・カーン、ジョン・ハウスマン、モード・アダムス、ジョン・ベック、モーゼス・ガン、パメラ・ヘンズリー、その他大勢

 ついに花粉がやって参りました!目やノドが痒いです。鼻づまり始まってます。これが4月まで続くと思うとホント憂鬱になりますね。花粉も神経質になるほど症状もヒドくなる気がします。なのであまり相手にしないようして、症状を軽くしたいと思います。花粉って何のこと?
さて、今回はローラースケートを始めるきっかけとなった懐かしいSF作品です(笑)。

【ストーリー】
 2018年の未来。大企業が世界を治めるようになった時代。戦争、犯罪、環境問題、格差等は一切無くなり、世界は平和そのものになっていた。そんな中、世界中の大衆は企業が提供するローラーボールに熱狂していた。ローラーボールとは、複数プレイヤーによる2チームがローラースケートでトラックを周回しながら鉄球を巡りバトルを繰り広げる過激なスポーツだ。ヒューストン・チームの花形プレイヤーのジョナサンは今日も絶好調だった。マドリッド・チームとの試合も難なくこなし、重役も誇らしげにジョナサンを称える。しかし、翌日ジョナサンを呼んだ重役は彼にいきなり引退しろと告げる。理由を聞いてもただ引退しろとしか言わない重役にジョナサンは納得できない。自分には全世界の熱狂的ファンが付いているのだ。重役を無視し、次の東京・チームとの試合に挑むジョナサン。しかし、警告は徐々にエスカレート。それは試合内容にまで及ぶのであった・・・。



【感想と雑談】
ズガッと発射された鉄球をボールキャッチャーのミットがガッシと受け止める。そんなテレビCMのイメージが当時のガキンチョのハートを鷲掴み。その後にローラースケートが流行り出したという(たぶん)。水性ボールペンも「ローラーボール」と呼ばれるようですが、本作とは関係なさそうです。

 バッハの「トッカータとフーガ」をBGMに、暗闇からローラーボールの試合会場が浮かび上がるというイカしたオープニング。ゲートからスタッフらが登場し試合の準備をし始める。

 近未来スポーツのローラーボール。その舞台となるのは全長160mの円形トラックで、18度の角度がついたバンク状態から巨大なすり鉢を思わせる。トラックの中央には各チーム用のピットエリアがあり、そのど真ん中にはコントロールタワーが設置され、天辺ではスタッフがイスに座りゆっくりと回転しながら試合を監視する。トラック外周の壁面には1ヶ所、奥に磁気発生装置が埋め込まれた穴が開いている。鉄球をブチ込む為のゴール穴だ。

 チームは合計10人のプレイヤーで構成。攻撃スケーター×5人、ボールキャッチャー×2人、バイカー×3人。ユニフォームは上半身がほぼアメフト仕様で下半身が皮パンツ、そしてバイカー以外はローラースケートを着用。関節部分には防御用パットを装着し、両手のグローブには鉄鋲が並ぶ。パンチを食らったら大変なことになりそうだ。ジェームズ・カーン演じる主人公ジョナサンは、今日もバッチリキメてヒューストン・チームを盛り上げる。観客らも鼻息荒くジョナサンコールを繰り返す。

 本作ではローラーボールは3試合行われる。1試合目はマドリッド・チームとの対戦。コントロールタワーからの遠隔操作で、トラック外周の空気砲から鉄球が発射される。ソフトボール大で重さ10kgの鉄球は、勢いで外周の壁面に沿って転がっていくが、やがて失速し中央に寄ってくるのをボールキャッチャーが特製のミットでキャッチ。その鉄球を渡された攻撃スケーターがバイカーの牽引で一気に加速しゴール穴を目指す。

  ここからローラーボールの本領発揮。ゴールを妨害しようと寄ってくる敵をパンチやキックで倒すのは当り前。バランス崩し転倒した敵がいれば蹴飛ばしたりバイクで轢いたりする。死傷者が出たって大したペナルティにならない。そういうルールなのだ。そんなローラーボールに観客らは大熱狂。ジョナサンがゴールに鉄球をブチ込めば、鼻息荒すぎて飛んでく勢いだ。



 平和になりすぎた世界。そうなると大衆は欲求不満となり刺激を求め出す。世界を支配する大企業はそれに気付き矛先をローラーボールに向けさせるが、気付いてみればジョナサンなるカリスマプレイヤーが誕生。彼に夢中になり出した大衆を制御できなくなる恐れが出てきた。

 そこで、チームを統括する重役がジョナサンを無難に引退させようと画策するのだが、ジョナサンは納得いかず言うことを聞かない。その後ジョナサンが注文した本をお取り寄せ不能にしたりとプチ嫌がらせをする重役。この後も何度かジョナサンを説得するが、全然首を縦に振ってくれないので、ついに重役はスパークし、ルール変更を施すことに。2試合目の東京・チームとの対戦を、ペナルティ無しの交代制限付きにするのだ。

 黄色のユニフォームでキメた東京・チームは、不気味なイエローモンキーだ。あまり好意的な描き方をされていないのが残念。試合前のトラック周回のデモでは両手を交互に突き出しながら行進し、突然、仁王像みたいなポーズでイヤァーッと叫び加速する。ダメだこれでは。

 東京・チームが繰り出すいかにも日本的でエキセントリックな戦術に、ヒューストン・チームは翻弄され、かなりの痛手を負ってしまう。ちなみに、当時は本作のベースになったに違いない「ローラーゲーム」というエンターテイメントが実在した。これの日本チームである東京ボンバーズがこの東京・チーム役としてオファーされたのだが、撮影現場を見に来た当人達があまりの怪我人続出状況から、今後の興行に響いてしまうからと出演を断ってしまったそうだ。うーん、ここをなんとか頑張って頂ければ、伝説となったかもしれないのに。

 3試合目のニューヨーク・チームとの対戦では、ペナルティも交代も時間制限も無しというデスマッチ仕様にまで加速。ジョナサン抹殺に向け大企業までも鼻息が荒くなる。怒涛のクライマックスは生き残ったジョナサンと敵バイカーとの一騎打ち。

 そういえば同年代の『デスレース2000年』も近未来のスポーツを描いている。独裁政権下でチキチキマシンなデスカーが人を轢きまくるレースに大衆のボルテージも急上昇。そんな中で不満分子が政権を打倒しようとする内容は『ローラーボール』とどことなく同じ匂いがする。どんな社会であっても上手くバランスをとらないと人間に平和と暴力の2面性がある以上は必ず変化が現れてくるという問題である。『デスレース2000年』には強烈な脱力感と笑いが伴うけど(笑)。

 シリアスさと臨場感では『ローラーボール』の方がずっと上。中だるみや試合の細かいカット割りが気になったりするけど、それでもスケーターを追うカメラワークは迫力あるし、実在のスポーツかと思える程の生々しさもあって、’75年製作にしては凄い作品なんじゃないかと思います。

 大ファンだったジョン・マクティアナン監督がこれのリメイクを撮っていますが、噂によれば大変な出来とのこと。IMDbの評価を見て身体が震えてしまいました。2.7/10(笑)。凄い監督だったのに、こうも才能は続かないもの??? 観るのが怖くなってきた(笑;)。


【出典】『ローラーボール』/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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2009年2月12日木曜日

映画『IT イット』 ・・・ピエロがイットで邪悪な殺人鬼なんだそうです

●原題:IT
●ジャンル:ドラマ/ファンタジー/ホラー/ミステリー/スリラー
●上映時間:187min
●製作年:1990年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:トミー・リー・ウォレス
◆出演:ハリー・アンダーソン、デニス・クリストファー、リチャード・トーマス、ティム・リード、ジョン・リッター、セス・グリーン、アネット・オトゥール、リチャード・マシュー、ティム・カリー、オリビア・ハッセー、その他大勢

 まだ花粉症は大丈夫でしょうか?そろそろな予感がしておりますが・・・(笑;)。花粉症の場合、外出しないのがベターなのですが、なかなかそうもいきませんね。外出から戻ったら玄関の前で衣服をよくはたいて花粉を落とすことなんだそうです。なんとなく気休めな感じもしますが、やった方がいいんだそうです。めんどくせー。
 さて、今回は『イット』。出ましたスティーブン・キング。パッケージのデザインがとても印象的なホラー映画です。

【ストーリー】
 アメリカ。メイン州のある町。子供が何者かによって惨殺されるという事件が多発する。住人のマイクは事件の性質からある件を思い出し顔面蒼白になる。そして子供の頃につるんでいた仲間6人に急遽連絡を取り、「ヤツ(イット)が現れた」と伝える。町を出ていた6人は電話越しのマイクの声を聞き、かつての恐ろしい記憶が蘇る。それはまだ子供だった30年前、ペニーワイズと呼ばれる邪悪なピエロ=イットから受けた恐怖体験であった。その頃にも子供の連続殺人事件が発生し、7人は犯人がイットであると確信していた。やがてイットはトラウマとなり成人になった今でも決して忘れることの出来ない存在になったのである。そいつが30年後に戻ってきたのだ。固い友情で結ばれた7人は、イットを仕留め永遠に断ち切るべく再び町に集結するのであった・・・。



【感想と雑談】
 スティーブン・キング原作のホラー映画『イット』に挑戦。

 行き付けのレンタル屋に置いてあったものの、なかなか手が伸びなかった作品だが、ブロガーのtake51様から『ミスト』級の衝撃作というコメントを頂き、観たい度が一気に急上昇(笑)。

 子供の頃に受けたトラウマを未だに引きずっている7人の男女が主人公。人数が多すぎるし長編ということもあってか、3時間枠のテレビ映画として製作されたものだ。冒頭、一人の少女が庭先に出現したピエロ=イット(IT)に襲われる。この時、はためく洗濯物の隙間からイットの顔が一瞬覗くだけで、直接的に襲う描写はない。次のカットでは少女の遺体を発見して悲鳴を上げる母親のアップだけだ。何気ないが、この一瞬映るイットの白塗りの顔がちょっと不気味。ダラけた始まり方をしていないので良かったと思う。いきなり庭先にピエロが出現したら、色んな意味で怖い(笑)。

 スティーブン・キングの作品にはトラウマ要素が多いようで、実際にキングの幼少時代の経験が盛り込まれているのだそうだ。原作は一度も読んだことが無いのだが、観てきた映画化作品の中では確かにトラウマ的なものや子供臭さを感じるものが多いと思う。7人の中で特に主人公格のビルは、かつて弟がイットの犠牲になったことから最もトラウマ度が高く、現在は脚本家として成功している設定だ。まさにキング自身を反映させた役である。

 因みに、ビルの奥さん役を演じるのはオリビア・ハッセー。布施明の元奥様(笑)。よく考えたらオリビア・ハッセーが動いて喋っているのを見るのは初めてであった。本作を逃していたら永遠に写真の人で終わっていたと思う。ラッキーであった。

 前半のマイクが仲間に連絡していくくだりでは、7人全員の現在と過去が丁寧に描かれる。現在は様々な職業に付きそれなりに幸せな生活を送っているのだが、過去に遡ると皆何らかの問題を抱えている。弱い立場でもある彼らは結束して互いを助け合うのだが、イットは彼らの弱さに付け込み様々な悪夢を見させるのだ。この7人が抱える悩みや悲劇は、観る人によってはグサリとくるかもしれない。そんな思いを増幅させるイットの存在は最悪だ。

 この辺り7人もいるものだから見応えはかなりあった。ちょっと疲れたけど(笑;)。



 邪悪なピエロ=イットは一見して普通のピエロだが、おどけた後には必ず目を剥きキバが並んだクチをグワッと開く。この映画のせいで全米ではピエロは恐怖の対象となったらしい(笑)。ピエロといえば、お笑い担当として楽しい存在のはずであるが、あの白塗りの下に悪魔の存在を知った時のショックは確かに大きそうだ。そういえば、バットマンのジョーカーもその性格と白塗りのギャップから強烈な印象を残していた。

 イットを演じるのはあのティム・カリー。『ロッキー・ホラーショー』のフランケンフルター役が最も思い出されるが、ここではそれ以上の強烈なピエロメイク。言われないと本人だと気付かなかったかも。ダミ声でゲハゲハ笑ったりするし。あそこまで強烈なキャラはティム・カリーだからこそ表現できたんじゃないかと思う。目がとても印象的な人だ。

 後半に入ると大人になった彼らに再びイットが襲い掛かり悪夢の再来となる。それでもめげずに彼らはかつてイットを追い込んだ地下道へと再突入。最終決戦へとなだれ込むのだ。

 ここで、彼らがいかにして過去のトラウマを克服しハッピーエンドを迎えるかが最大の見せ場なのだが、イットの正体が明らかになるところでキングはやってしまう。ここで『ミスト』の衝撃のラストが引き合いに出される訳だが、ある意味、本作の方が衝撃度は上である(笑)。『ミスト』ではキングの大嫌いなアレがわんさか出てきたけども、まさかイットの正体もアレにするとは!トラウマ対象の一部というのはわかるのだが、これでは観る人全員が固まってしまうはずだ。イットは最後までピエロのままでよかったのではないか。

 DVDのオーディオコメンタリーでは監督や役者らが賑やかに解説をしているが、原作のラストについては監督も「これだけ期待させて最後は○○かよ!!」と本気で思ったらしい。大丈夫か監督。キングがコメンタリーを聞いたらどうするんだ。ヤケクソなのか。テレビ映画なので予算が厳しかったらしく、ラストの描写には相当の苦労があったようだが、それもあまり報われなかったようだ。ただ、イットが子供を襲う時に体の一部をそれらしいものに変形するシーンがあって、少なからず伏線を張っていきなりのラストにはしないよう工夫はしていたようである。

 監督や役者らはあまり原作に忠実にやろうとはしなかったらしいが、それならラストもそうして欲しかった。キングからは最高の見せ場なんだからと、釘をブッ刺されていたのかもしれない。よくわからないけど。

 イットが何者で何処から来たのかは重要でなく、あくまでもスティーブン・キングの実体験を元に幼少時代のトラウマをいかにして克服するかを描いた内容。テレビ映画にしては結構しっかりしていて、面白い作品だと思います。ラストの10分を除いて(笑)。




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【Ronald McDonald insanity】
現在、こちらのイット様が世界を席巻しているようです(笑)。


【Special message from Ronald McDonald!】
せっかくなので怖いのを追加しました。



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【出典】『イット』/ワーナー・ホーム・ビデオ

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2009年2月7日土曜日

映画『片腕マシンガール(英語吹替版)』 ・・・あの女子高生スプラッタムービーが凱旋したんだそうです

●原題:The Machine Girl
●ジャンル:アクション/コメディ/犯罪/ホラー/スリラー
●上映時間:96min
●製作年:2008年
●製作国:アメリカ/日本
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:井口昇
◆出演:八代みなせ、島津健太郎、亜紗美、穂花、諏訪太郎、
木嶋のりこ、石川ゆうや、西原信裕、デモ田中、その他大勢
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 よく考えたら2月なんですね。ホント早いものです。2月といえば1年で最大のイベントを迎える時期です。それは花粉症(笑)。今年もまたひどいらしく、薬局に行くと花粉症グッズコーナーがウハウハ状態です。なるべく世話にはなりたくないものですね。
 さて、今回はあの東京ショックシリーズ第一弾『片腕マシンガール』です。凱旋特別上映に行って参りました。凱旋っていったいなに??

【ストーリー】
 女子高生のアミは弟のユウと二人暮しをしていた。両親が自殺によって他界し残された二人であったが、それでも逞しく幸せに暮らしていた。そんなある日のこと、ユウが強烈な苛めを受け殺されてしまう。途方に暮れたアミはやがて怒りに燃え狂い犯人への復讐を誓う。真犯人は服部半蔵の血を引くヤクザの息子ショウであった。アミはヤクザの屋敷に潜入しショウを捕らえようとするが、逆に片腕を切り落とされ瀕死の重傷を負ってしまう。なんとか脱出したアミが転がり込んだのは、同じく殺されたユウの親友の両親が営む自動車修理工場であった。初めはアミを歓迎しなかった母親ミキだが、その凄まじい復讐心に心を打たれ共に戦うことを誓う。そして父親スグルは腕の代りにと工場でマシンガンの製作に取りかかるのであった・・・。

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【感想と雑談】
 昨年末に観に行った『東京残酷警察』は東京ショックシリーズの第二弾であった。本作はその第一弾に当たる記念すべき作品である。
 初上映や再上映をことごとく逃してしまい、もう大画面では無理かと諦めていたのだが、なんと日本版DVDの発売記念とかで再々上映の運びとなったのだ。場所は勿論、名古屋のアジア系シアター、名古屋シネマスコーレである。

 今回は特別企画として、なんと英語吹替版の上映であった。元の音声が完全日本語のところわざわざ英語に吹替えられ、それを字幕で観るという非常におかしな鑑賞であったが、これが意外やハマってしまい普通に楽しめてしまった(笑)。結構ドスの効いた英語なんだけど、むしろその見た目とのギャップから異様なパワーが全開であった。海外向けにはこれが当り前なんだろうけどね。

 開始早々、イジメの現場に女子高生アミが登場。肘までしかない左腕にマシンガンを装着し、イジメっ子の高校生らをギタギタにしていく。もげた腕や砕けた頭部からはブッシューッと血が噴水のように噴き出し血煙と化す。掴みはOKのオープニングタイトルだ。

 特殊メイクや残酷効果をあの『東京残酷警察』で監督も努められた西村喜廣が担当。人体破壊見本市みたいなことになっていた。『東京残酷警察』でもそうだったが、人体破壊といってもやたらオーバーアクションで潔く、有り得ない描写に不快感などこれっぽちも感じることはなかった。逆にスカッとするくらい。心のガッツポーズ連発である。

 だいたい、ヤクザに腕を切り落とされ、何度も失血死を迎えるくらいに大量の血液を噴出するというのに、アミはちっとも昇天しない。気を失うも全然平気なのである(笑)。もうこの映画はある意味ファンタジーに突入しているので、倫理や道徳感なんかで目くじら立てるのは意味のないことなのだ。

 アメリカの映画会社の出資によって立ち上げられた東京ショックシリーズ。その第一弾として、アメリカ側の「忍者と手裏剣、そして黒尽くめのヤクザを出して欲しい」という条件を、井口昇監督が見事に取り込み映像化。あまりにもバカバカしい展開にハッとするアクション演出、そして西村喜廣の残酷効果がこれらに輪をかけるという見事すぎるエンタテイメント作品。中学忍者隊ドリルブラという素敵アイテムもてんこ盛りだ。

 主演の女子高生アミを演じるのはこれが初出演となる八代みなせ。前半で土目建築業のオッサンらを懲らしめるところが個人的に◎。運動神経がいいらしくアクションも冴えていて、血飛沫浴びながらの鬼気迫る演技にも拍手。続編が作られるのなら、ぜひ続投をお願いしたい♪

 アミの親友にヨシエという女子高生が登場するのだが、これを演じるのは木嶋のりこ。実はこのヨシエを主人公とするスピンオフ作品『Hajiraiマシンガール』がセル版DVDに特典映像として付いていて、今回これも特別上映されたのだ。アミの意思を継ぐべく改造を施された恥ずかしがりや女子高生ヨシエ。暴漢に襲われ恥じらいが頂点に達すると体内からマシンガンが飛び出し銃弾をばら撒くという、健康的なお色気+ユルユルアクションがとってもナイスな短編作品。冒頭にはなんと我らが機動隊長ことYukihide Benny様も登場!!これが大画面で観られるとはラッキーであった(笑)。

 因みにこのDVD、日本映画なのに日本語と英語の2種類の音声が収められていて2倍のお得感。また本編前にとても面白い鑑賞レクチャー(初公開時に上映されたとか)が入っていて大爆笑もの。本編が始まる前からあんなに笑えたDVDは始めてだ。皆さん、これホント楽しいですよ(笑)。

 当ブログの右上に両作品のトレーラー動画を設置しています。『東京残酷警察』と交互に表示されますので、よろしければご覧下さいませ(^ω^)ノ


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2009年2月1日日曜日

映画『ホテル・ワルツ』 ・・・イタリアから超絶技巧の映画がやってきました

●原題:Valzer
●ジャンル:ドラマ
●上映時間:90min
●製作年:2007年
●製作国:イタリア
●言語:イタリア語
●カラー:カラー
◆監督:サルヴァトーレ・マイラ
◆出演:ヴァレリア・ソラリノ、マウリツィオ・ミケリ、マリーナ・ロッコ、グラツィアーノ・ピアッツア、エウジェニオ・アレグリ、その他大勢(ホテル従業員やお客達)

 ご無沙汰しております。リニューアルがやっと完了しました。実はもっと早く出来上がる予定だったのですが、閉鎖した辺りから強烈な体調不良に陥りまして、数日間寝込んでしまった次第です。インフルエンザでなく単なる風邪でしたが(汗)。
 今回のリニューアルは3カラム化がメインになります。その他は変り映えなく地味ですが、ちょっとはブログらしくなったかな(笑)。
 さて、2007年度の東京国際映画祭でごっつ注目されたイタリア映画です。少なくとも私の中では(笑;)。いつ公開されるのだろうと、ボケ~ッと待っていたら、先日レンタル屋でいきなり発見してしまいました。激しい二度見をカマしてしまい、そんな姿が店内の防犯カメラに映っていないか心配です(笑)。

【ストーリー】
 イタリアはトレノ市。ある高級ホテルに勤める女性従業員のアッスンタは今日が勤務の最終日だというのに母親からは悪口ばかり言われいつものように気が重かった。そんなアッスンタの前に過去同僚だったルチアの父親だと名乗る男が現れる。娘に会いたがる男に動揺するアッスンタ。男は娘ルチアと8年間手紙を交わしてきたと言うが、実はその手紙はアッスンタが密かに代筆をしていたのだ。しかもルチアについては言いがたい事実があった。どーするアッスンタ・・・。



【感想と雑談】
 2007年の東京国際映画祭のプログラムからその存在と内容を知りぶっ飛んでしまった作品。残酷系以外のイタリア映画はそんなに観ることは無いのだが、これには猛烈に惹きつけられた。内容は、毎日が憂鬱な娘アッスンタを中心に、コメディとかアクションとかホラーでも何でもなく、日常の高級ホテルで起こる90分間の出来事をワルツのごとく淡々と綴っただけのものだ。

 で、何にそんなにぶっ飛んで惹きつけられたのかと言うと、それは全編ワンカット一発撮りだからである。上映時間の90分間が劇中流れる時間とまったく同じ。リアルタイムで進行する作品は数多いと思うが、それを一発撮りで作るというのはそう無いのではないかと思う。ワンカットの長回しといえば一部アクセント付けに非常に有効な手法なのだが、それを全編に適用してしまったのだ。ぶっ飛んで惹きつけられの驚愕ものである。@。@!!←こんな感じ。以前記事にした超絶技巧PVと同様に、映画もこの様な技巧を凝らしたものにとても惹かれてしまう。上っ面だけの浅い自分(笑;)。

 オープニングタイトルが終わると、オープンカーでホテルへ移動中のアッスンタと母親のやりとりを、ボンネットに固定されたカメラが延々と映し出す。かなり性格の悪い母親のようで、一方的な捲くし立てでアッスンタを攻め、挙句の果てには「アンタを殺してやりたいわ」とか抜かす。この先ホテルがハンス・グルーバー一味に占拠された場合、真っ先にドタマに穴が開くのは、娘を売ろうとするに違いないこの母親であろう。いきなり話が逸れたが、それくらい腹立たしい母親です。

 オープンカーがホテルの地下駐車場に到着すると、勿論カットは変ることなくボンネットから外されたカメラがそのまま従業員室に向かうアッスンタを追っていく。エプロンを付けながら途中仲間と言葉を交わし、厨房から食事を客室へ運ぼうとしたアッスンタの目の前に元同僚ルチアの父親が現れる。動揺しながらもアッスンタはエレベーターに乗り目的の客室に到着。中ではサッカーチームの腹黒そうな重役らが何やら打ち合わせをしていて、早々に追い出されたアッスンタは厨房へと戻っていくが、カメラはそのまま残り今度は部屋を出て行く重役らを追っていく。チームの新監督に八百長もどきの話を持ちかけ、チームの将来を話し込みながら歩いていく重役らは、やがて従業員室に向かうアッスンタと交差し、再びカメラはアッスンタを追っていく。

 こんな調子でホテルの中で起こる様々なドラマを、焦点を切り替えながら連続して描いていくのである。観客がそれぞれ透明人間になってホテルの中を好き勝手に覗き回る感覚だ。この様な構成はいくらでもあるだろうが、それをワンカットで描くというのは、何度も言うようだがホントに驚愕ものである。



 今のこの時をワンカットで撮るだけでも驚愕ものだが、本作ではあろうことか回想シーンまでもワンカットで描き出す。ルチアの父親である男との会話の中で、アッスンタがルチアや同じく同僚だったパレスチナ人従業員ファティマのことを思い返すところだ。カメラは現在と過去の行き来を切れ目なく映し出していく。こんな生活から抜け出しセレブな貴族になりたいルチアに、異国から流れ着いた暗い過去を持つファティマ。そんな対照的な二人に過去のロングヘアのアッスンタが絡む。現在のアッスンタはショートヘアなのだ。ロングヘアがちょっと不自然に見えるが、そこは察してあげよう(笑)。

 ワンカット撮影といえばまず一切ミスは許されない訳で(普段でもそうだけど)、役者やスタッフらがどれだけ苦労を重ねたのかが一番思い浮かぶところ。ワンカットによる映像は今そこに映し出されるものが全てな訳だが、各エピソードが幾度も自然に交差することを考えると、映っていないところでも並行してエピソードを進めてるんじゃないかと思えてくる。90分もの間、部分的とはいえ自然な流れで登場してくる役者らの演技はどれもこれも圧巻である。

 また、何度も登場する回想シーンでは、アッスンタの衣装や髪型も高速で変るのだが、その時にカメラの死角ではどんな状況になっているのか。実在のホテルを使っていることもあって変に細工もできないだろうし、実際どうなってるのか気になるところ。もの凄い計算能力と作業効率が必要となりそうだ。あとカメラマンの体力も。

 本作は従来のフィルム撮影では不可能だった全編長回しをデジタルカメラによる撮影で実現したとのこと。リスクは少なかったかもしれないが、それでも大冒険である。実はデジタル処理で上手いこと繋げてました!なんてオチは絶対に無いことを願う。

 高級ホテルだというのに登場人物らに華やかさは感じられず、どこか絶望的で気分はズシリと重いまま。本筋のアッスンタと男の件が、ちょっとだけいい感じで終わるのがせめてもの救いか。空気が張り詰めた状態に長回しの緊張感も加わって、えらく緊迫したドラマであったと思う。

 ワンカットの一発撮りはギミックを入れ難そうで、必然的に人間の行動や心理を追う展開になってしまいそうである。それならばホラーやスリラーなんてのも結構イケるんじゃないかと思えるのだが、実際どうなんだろうか?

 印象深かったのが、どこぞの教授がサッカーと社会の関係についてサッカー関係者らとディスカッションするところ。サッカーは政治的支配力を持つ世界共通の宗教みたいなものと断言し、自国イタリアのサッカー王国ぶりを分析する。それで何か警鐘でもするのかと思ったら、関係者らはそれをビジネスに繋げようとする腹黒さ。お国柄らしくネタに出したものの、浮かれることなく冷静冷徹にサッカーを扱っているのが意外でもあった。

 これは『有頂天ホテル』みたいなアッホーなノリを期待すると間違いなく身体を壊すと思う(笑;)。超絶技巧なんかよりもストーリー重視の方はご注意下さい。

 タイトルについて、映画祭の時は『ワルツ』だったのが、DVDでは『ホテル・ワルツ』に変更されています。因みにタイトルで検索してみると、大分県の山間に建つモーテル「ホテルワルツ」もヒットしますが、本作とは関係無いと思います。



<2015/12/14追記>
 凄く今更なんですが、長回し撮影で全編ワンカットに収めた史上初の長編作品は、ロシア製作の『エルミタージュ幻想』('02)という作品なのだそうです。なんという勉強不足・・・TT
 『ホテル・ワルツ』よりも遥か前に作られたその内容とは、美術館を舞台にロシア王朝を描いた絢爛豪華なものであるとか。凄く興味が湧くのですが。


【出典】『ホテル・ワルツ』/オンリー・ハーツ

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